・腸脛靭帯炎とは
ランナー膝の代表である腸脛靭帯炎は、膝の外側に生じる炎症であり、腸脛靭帯の緊張が強まり大腿骨外側上顆部付近と擦れることによって発症します。この腸脛靭帯炎について解説してみます。
・腸脛靭帯とは
腸骨稜(ちょうこつりょう)や鼠径靭帯(そけいじんたい)などから起こった大腿筋膜張筋(だいたいきんまくちょうきん)は、大腿部の筋を全体的に包んでいますが、外側中央部は肥厚しています。この部分を腸脛靭帯と呼び、遠位(体から遠い部分)は脛骨前外側Gerdy(ガーディ/ジェルディ)結節に付着しています。近位(体に近い部分)では、大殿筋の一部と大腿筋膜張筋が付着し、腸脛靭帯が緊張することで、脛骨は外旋する仕組みになっています。
・腸脛靭帯炎の痛みの特徴
⚪︎ランニング時やランニング後に膝外側の痛みがある
⚪︎ある一定距離を走ると痛みが出たり、下り坂を走るときに痛みを増すのが特徴
⚪︎スピード練習によりストライドを広げることも要因となる
⚪︎時には階段を下る時にも痛みが出ることもある。
・腸脛靭帯炎を起こす原因
膝関節の安定機構でもあり、ランニングや自転車など、膝の屈伸を繰り返すことによって、腸脛靭帯が大腿骨外側上顆の骨突起の上を移動するため摩擦を繰り返し、腸脛靭帯に局所的な炎症を引き起こすため膝の外側に痛みが発生します。
体系的要因として内反膝、回内足があります。動的要因として膝が外側に向くknee-out (ニーアウト)や、膝が内側に入るknee-in(ニーイン)も原因となります。
・腸脛靭帯炎の対処法や治療法
基本的には保存治療が選択となります。痛みを感じたときは運動後アイシングとそれぞれ関係する筋(大腿筋膜張筋、臀筋群)のストレッチを入念に行いましょう。急性期の際は湿布などの消炎鎮痛剤を使用し、慢性期には温熱療法や運動療法が効果的です。難治性のものにはステロイド注射や、対外衝撃波疼痛治療術(たいがいしょうげきはとうつうちりょうじゅつ)などを試みるのも良いと言われています。(※対外衝撃波は保険適応外) 回内足の改善にはインソールなどを利用すると良いでしょう。根本的には、股関節周囲の柔軟性の獲得、ランニングフォームの見直し、練習量の調整などが効果的です。
・まとめ
大切なことはランニング後の日々のケアや、目指す大会に向けての適切なピーキング。また疲れていても正しいフォームで走りきれるランニング技術や、ランニングを支える全身の筋力も不可欠になります。普段から走る人も、これから走り始める人も、こまめなストレッチや補強のトレーニングなどでケガに負けない強いランナーを目指しましょう。
〈参考文献〉
ナショナルチームドクター・トレーナーが書いた種目別スポーツ障害診療
標準整形外科学
社会福祉法人松田整形外科記念病院